商標登録騒ぎで、草津温泉の余震はつづくよどこまでも。

  草津の伝統的湯治法 時間湯 が伝統湯になる

 

令和3年11月8日付の上毛新聞の一面に草津温泉に伝わる湯治法、時間湯に関わる記事が掲載された。

 タイトルを『湯治文化と観光共存』と銘打ち、時間湯から伝統湯に改名をして地蔵の湯周辺の開発をアピールし、観光につなげるという内容になっている。

 この記事の要点はこうだ。「湯長」を廃して「湯守」とする。地蔵の時間湯は貸切風呂として、底を浅くし、シャワーを設置して観光客に開放する。千代の湯は湯守を置き、湯もみやかぶり湯といった作法を指導する。地蔵の湯は有料、千代の湯は無料として観光客が利用しやすいようにするという。

 

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下の画像は実際に一面に載った記事。時間湯の話がローカル新聞とはいえ一面に来るのは異例。

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 草津温泉の時間湯

時間湯

 

 時間湯というのは、草津温泉に古くから伝わる湯治法である。浴客が集団で湯を揉み、3分間の入湯を行う。それを決められた時間に集まり行うことから時間湯と呼ばれるようになった。湯もみ(準備運動)、湯かぶり、入湯、汗だしを1サイクルとし、通常一日に3回ないし4回の入湯を行う。

 

 草津の湯は湯口から取り入れても浴槽にたまる湯は高温であるため入浴には温度を下げる必要があり、木の板で合わせて揉むことにより湯もみが始まった。その後、東大医学博士の三沢敬義氏と地元草津の浴医局の布施廣雄氏により上限温度を48℃とした。時間湯は医療制度の整わない時期から多くの浴客の病を治し、現代においても、アレルギー疾患をはじめ病の克服に大きな役割を果たしてきた。

 

 その時間湯が湯長制度の廃止、そして今回の時間湯利用の廃止となったのは、現草津町長の黒岩信忠氏の医師法に抵触する可能性、湯長への不正疑惑を上げ、歴史的文化的遺産である時間湯の利用を停止し、観光目的利用に転換したことから大問題に発展した経緯がある。

 

 元来時間湯は町の施設を借りた独立運営をしていたが、湯長の身分保障がないまま、ボランティアのような低賃金労働を余儀なくされていたことから、草津観光公社の所属の職員として身分保障を行い町の公社に所属して委託業務として運営されてきた。

 

 伝統湯一面記事考察

 

bおそらくこの記事は群馬県内だけであろうが、時間湯についての記事が群馬県で最多部数を誇る上毛新聞の一面を飾るのは異例中の異例であり、何かしらの意図があることは容易に想像がつく。

 

 この記事にあるように黒岩町長が時間湯の湯長の経費の不正使用と言い出したのは議会においてである。町長は実際に不正があったとは言っていないし、証拠も何一つ見つかっていないという話だ。

 また、法令に触れるという点においても実際に触れているわけではなく。実態の聞き取り調査も行われていないという。また 浴医局という地元の町医者との連携があるという話も出てこない。

 こうしたことが調べてみるとわかってくる。

 

 つまり、

 徹底取材を行わず書かれた記事としては片手落ち感が否めない。

 

 記事は桜井俊大という草津担当の記者が書いたそうだが、草津町の黒岩町長とも連絡を取り合える間柄と聞こえてくる。つまりこの上毛新聞一面記事は、町長の思惑が働いた可能性があるということだ。では何の思惑なのか。

 

 それは

 選挙がらみ――!

 ではなかろうか。

 

 新聞媒体を使って自分の改革者としての実績をアピールしようとする狙いがあるのではないか。

 ただでさえ、セクハラというレッテルを張られ、やっていないとしてもダーティーなイメージがついてしまったことは確かであろう。

 イメージの払しょくに躍起になるのは、黒岩町長が退陣するのがよいと考える人は町に大勢いるからであろう。

 そうした声を押さえるにもこうして新聞を活用することが有効ではなかったのではないか。

 

 

 

 商標登録による名前の変更

 

 さらに時間湯の関係者が、黒岩町長に先んじて、商標登録申請をしたことにより、町長が激怒して、名称を伝統湯としたことが明らかになっている。これについて黒岩町長は、

「(関係者らによる時間湯の)私物化の証しそのものだ。いつまでも科学や法令に基づかない伝統への独善を断ち切る意味でも、『伝統湯』と改めた」

としている。

 しかし、逆に考えちゃいなよ。時間湯として機能しないのに時間湯を商標登録して名乗ろうとしていたことは町としてどうなのよ。

 そもそも時間湯の名前は町のものでもない。100年商業利用を目的としなかったのにここへきて商標登録をしようと町長が考えたとは容易に想像がつくが、さて伝統を守ることと明らかに矛盾していないかい。

 時間湯関係者に察知されて先を越されたというなら、先に観光化を思いついたのは黒岩町長ということになる。

 伝統を守ると言いながら商業化をして観光目的化を進め、湯治をしないとするなら、そもそも商標登録をしようとしたこと自体、町長自体が迷走しているのではないの。

 声高に叫んでも道化を演じているな印象だよ。

 

 

 

 

 裏草津命名する地蔵堂周辺施設

 さらにこれに合わせて地蔵の湯の周辺を整備し、新たに足湯をリニューアルし、顔湯を設置、地蔵の湯裏手には、草津ゆかりのまんが家の図書館とカフェが設置される。

 

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 綺麗に整備されて観光に寄与はするであろう。この地区の歴史や事情を知らない観光客は見た目だけの施設に満足すると思う。

 施設自体できることや町の景観が良くなることはなるほど良いことかもしれない。しかし、伝統の継承と観光化は分けて考えたほうが良いのではとも思う。

 

 

 湯治の文化の衰退

 

 草津温泉の時間湯を知らない人には特に問題点がないように見え、むしろ新しくきれいになったことでよくなるように見えるかもしれないが、この時間湯から伝統湯となることには大きな問題点がある。

 

 まず、一番の問題は湯治としての入浴が出来なくなってしまったことだ。地蔵の湯は時間湯の利用が廃止となり、安全管理をする人間も、湯もみで湯を作ることもない。また湯治にたいして助言する人もない。単なる貸切風呂では湯治ができるはずもなく、歴代湯長が受け継いできた技術を発揮する場所ではなくなった。

 

 また千代の湯についても、あくまで観光客に対する説明がメインで、湯長がいないなかで湯治の技術を受け継がない「湯守」が実際にお湯を作れるのかは甚だ疑問である。

 

 黒岩町長は「これまでの歴史で、科学や法令に基づかない伝統への独善が大きく膨らんでしまった。本来の伝統的な入浴法をしっかりと受け継いでいきたい」と発言しているが、時間湯の研究は群馬大学をはじめ過去にされており、論文も出ている。時間湯に関する書籍もあり、そのなかで詳しい湯治のメカニズム解説も解説している。臨床事例としては130年以上の歴史の中で多くの湯治客の感謝がそれを物語っている。黒岩町長の伝統への独善は、歴代湯長の功績を否定する発言である。

 

 そこのところを無視して科学やエビデンスというのならきちんと湯治の科学的メカニズムを検証して、湯治のできる環境を整えるのが本当に科学や法令を遵守する人の立場だろう。

 

 今のままでは、単に責任を取りたくなくて逃げているだけに見える。本当に大事にするなら関係者と向き合い。正面から話し合い。正解を導くのが筋ではないか。

 

 セクハラ問題でそれもできないなら、身を引くというこれだけの騒ぎの渦中にいる人なので身を引くということも英断であろう。

 

 せっかくの歴史あるそして効果のある時間湯なのだから、わだかまりを捨て湯治客に求められる本物の湯治を成し遂げてほしいものだ。