草津温泉狂騒曲 まだまだ遺恨はつづく

kininaru jounal

 

 草津温泉町長選挙を振り返る

 

今年、令和4年1月23日に群馬県吾妻郡草津町にて、町長選挙が行われた。

今回の選挙は、町史を見ても外からこれほど注目された選挙はなかっただろう。

というのも現職の黒岩信忠町長が4期目の出馬。そして町長室でのセクハラ問題を訴えた新井祥子元町議が、なんと町長選に出馬するという異例の展開だ。

 

そこに追い打ちをかけて、海老根篤氏が草津町長選に立候補するという三つ巴、いや1強2弱の展開となったからだ。

 

そしてももちろん結果は圧倒的多数の票を獲得した黒岩現町長が再選を果たしたというわけである。

とはいえ、投票率は5割強(56.48%)なので、ばかばかしいと棄権をした人も多数という、、

なんとも言えない展開ではある。ちなみに前回の町長選は現中澤康治町議が対抗馬として出て55.86%だったので関心度からしても投票率は上がらなかった問うことになるだろう。

news.yahoo.co.jp

 

 

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当選した黒岩町長は気炎を吐いている。それはそうだろう新井元町議のリコール違反の訴えは棄却され、刑事事件も不起訴、そして逆に刑事で訴えられ、今度は町が提訴と猛攻撃を仕掛けているのだ。

セクハラ事件の真偽はさておき、この二人の遺恨の強さに町が巻き込まれている感はこの投票にも表れているのだろう。

 

 選挙の舞台裏

 

さて、今回の草津町長選であるが、ここでも町長の組織力の高さが発揮された形だ。町長陣営は女将会を中心に前回同様、女性を組織しイメージアップをはかり、遊説に回っていたらしい。病院や学校の近くで声を張り上げていたのでクレームになったのはご愛嬌として、なかなか精力的だったようだ。

そのかいもあって前回のリコール選挙の組織を使い見事当選を果たしている。とはいえ投票をした人も手放しで入れたわけではなさそうだ。

新井祥子氏を嫌いな人は町民のほぼ大多数なので基本的に一択の選挙であるが、それでも強引な開発の進め方に疑問を持つ者や自分にすり寄る者だけを優遇するやり方に快く思わない人もいるとか。

さらに、町で発注する業務に関してはかなり業者を見下して、予算を叩いてくるとか。

このあたりの評判を決して良いものではない。

しかし、対抗の新井祥子氏は最悪である。

彼女は町を騒がす悪者。セクハラ問題以前にも町議になってから仕事をしていないなど評判は決して良くはなかったが、町長を訴えたことで輪をかけてその地位を貶めてしまった。

実はセクハラがなかったかあったかは、特に問題ではなく(なかったという見方を持っている人が大半)それ以前に新井祥子氏は議員としていい思いをしたでしょう。という見方がある。

 

草津町において議員は特権階級であり、庶民にとっては上の人間であり、そんないい思いをしたのだからそれを仇で返すやり方に嫌悪している。

こんな考えの町民も多い。

つまり、権力者同士の争いに町を巻き込まないで、コロナの疲弊した経済を何とかしてほしいという本音もうかがえる。

 

 問題の焦点

 

 他の報道でもあるように事の発端は、電子書籍で町長室での密会を公表されたことに端を発する。新井氏と町長が町長室でなにやら不適切な関係になったという例の件である。

 それの公表に激怒した町長は、新井町議を名誉棄損で訴え、議会では懲罰をかけて、さらにリコール選挙をして議員資格はなくなった。新井氏はそれを不服として提訴したが、このほど却下され判決は確定した。その後新井氏は刑事事件として提訴するが検察は不起訴とした。

 それを待っていた町長は逆に刑事告発をして、町も新井氏を訴えるという流れになっている。

 そしてそれに伴い、新井氏を擁護する中澤康治町議、電子書籍を書い飯塚玲児氏もそれぞれ名誉棄損で訴えられている。

 そしてさらにさらにことを大きくしたのが「セカンドレイプの町」問題である。

新井氏についたフェミニスト団体が町長に猛抗議をして、庁舎前、湯畑で抗議活動を展開。町長のみならず、議会での扱いに対し、セカンドレイプがあったとして全面対決姿勢を打ち出した。

こうした経緯がすでに2年以上続いている。

そしてこの流れを受けての今回の草津町長選挙であり、言うなればリコール選挙の延長という認識が良いように思う。

 

 こうした一連の流れの端を発したのは、地区の開発にあったという話がある。

町長が進める草津の公共事業に反対を唱える時間湯の関係者が、地区の開発に対して反対運動を起こして、それに激怒した町長が時間湯の改革に踏み切ったという話だ。

 その時間湯の改革に反対する新井氏が、いわゆるセクハラ問題を訴えて町長と対立したという話だ。

 

 漆黒の闇での内容も時間湯の擁護の内容であり、ここに公表するということは時間湯存続のために新井氏がでっち上げた事実を作って時間湯を守ろうとしたという流れだ。

 そのため町長は、改革として時間湯の運営を町に移管し、経理の不正疑惑と医師法違反の可能性があるとして湯長制度を廃止、千代の湯、地蔵の湯の無料化をして、湯長の代わりに管理人を置き、このほど地蔵の湯は、貸切風呂として再オープンすることとなった。

 しかし、時間湯関係者は新井氏との関係は以前から切れていると言い、今回の新井氏の行動はすべて彼女の判断だったという声明を出している。

 そして先日新聞折込になった。湯長の手記では、町長が約束を破って、一方的に開発にすすみ、抗議をしたらありもしない不正経理、そして一回も事故を起こしていないのに医師法違反の疑いといい議会で湯長制度の廃止を決めてしまった。話し合いはなく一方的な処置であり、もとはと言えば町長が約束を破ったことが事の発端である。いわゆる逆切れで理不尽な町長の振舞だとしている。

 

 問題の考察

 

 この黒岩町長と新井氏の対立は、これまでの草津にはなかった前代未聞の町史に残る事件である。

 ここまで草津町が日本全国に知れ渡ったのは、温泉以外ではなかったことだ。その意味でとても興味深い内容と言える。草津市には迷惑な話であるかもしれないが。

 

 この問題の根幹をなすのは、新井氏と町長の関係、時間湯と町長の関係ということになるだろう。

 

 町長の言い分としては、新井氏との不適切な関係はなかった。時間湯は不正が見つかったので改革をした。ということになっている。

 

 新井氏の言い分は、セクハラはあった。町長は嘘をついている。私は被害者である。

 

 時間湯側の言い分は、新井氏とは関係がない。町長は約束を破り、自分の都合で時間湯を廃止した。

 

 このように互いに意見が食い違っている。これだけ反対のことを言っているということは事が単純ではないことを示しているだろう。恐らく、裏でなにか別のベクトルが働いていたのではと考えるのは不自然だろうか。

 我々の目の見えない水面下でのことで揉めてそれが表面に出てきたというのが今回の事件のように思う。

  

 新井氏の町議の任期は黒岩町長の現職の期間と被っており、選挙での応援の約束もあり、時には良好な関係を築いていたようだ。それがここまで骨肉の争いに発展するということは何故なのだろうか。町長の言う時間湯の問題がそれがとするならば、新井氏が人生をかけて争うことなのだろうかと疑問が出てくる。

 町長室以前に彼かがどのような関係であったのか。そのあたりもこの問題に関係をしてくるかもしれない。

 そうでないとこの愛憎劇は説明がつかないように思う。ぜひそのあたりのことを新井氏から聞こえてくると納得がいく。

 

 そして、時間湯の問題に関しては、町長は開発に対して時間湯が邪魔になったのは事実であろう。だから開発以前の動きとして、良好な関係を築いていたという話が出ていて、急速に悪化をしたのは地蔵の湯の開発化進んでからの話である。

 町長が裏切ったのかどうかは定かではないが、時間湯の解体が町長主導の元、進んだのは事実だ。

 改革の根拠として、経理不正、医師法違反についてすべて可能性という憶測で進めているが、実際の聞き取りは行われているという話はなく、また湯長からの反論も出ているところからも町長の強引な進め方が見て取れる。

 また、実際に湯治という観点から見ると、明らかに後退はしている。時間湯が何かしらの疑惑があったとしても湯治として機能していたことは確かであるし、町長が改革をしてその湯治が上手くいっているという話は聞こえてこず。逆にお客が来ない。これは時間湯ではないとする声の方が聞こえてくる。

 

 新井氏の件にしても、時間湯の件にしても問題の根底にあるのはどうも、町長のコミュニケーション不足にあるような気がする。

 ここでいうコミュニケーションとは対立する側に対していかに交渉を重ねるかということである。

 またもう一つ、以前は良好な関係であったという点で新井氏と時間湯側は一致する。

そうであれば、何故関係がこじれたのか。こじれる原因は何だったのか。

 表面上は選挙がらみ、開発がらみとしているが、どうもその裏で何かがあったように感じる。

 

 町長の評判で聞こえてくるのは、草津の財政を赤字から黒字へと改善した。草津へくる観光客を押し上げた。コロナ対策をよくやっている。こうしたポジティブな面はよく言われている。

 半面、やり方が強引、政敵は容赦なく潰す。逆らった職員は左遷。身内をひいきしすぎ。コストのことばかりで文化保存や歴史的価値を無視する。

 という声もある。

 

 しかし、一番の被害者は、町長ではなく、湯治客であろう。

このセクハラ問題に巻き込まれ、今の伝統湯では満足できない入湯客が一番の被害者であり、そのあたりの解決も町長の今後の課題としてあるのではないか。

 

 今後の草津の政局

 

 黒岩町長の4期目が決まり、まだ草津では町長の長期政権は続く。議会運営も継続することを考えると新井氏に対する処置、開発の進め方は変わらないであろう。

 計画としては草津の入り口に立体交差ができるようだ。地蔵地区の整備も最終段階に入っているようで、そのあともさらに開発は進みそうである。

 しかし、来年には草津議会選挙が待ち構えている。今回は草津の補欠議員選挙の話は触れなかったが、実はここでも面白い現象が起こっていた。それはまた後に紹介をしていこうかと思う。

 それはさておき、来年の選挙で町長反対派が出てくるのではという噂もあり、またさすがに4期目で打ち止めであろうことを考えると絶対的権力を握っていた黒岩町長も土台が揺らいでくる可能性がある。

 

 草津の政局は、日本の縮図というか地方の縮図のように見えるし、どこぞの隣国の争いのようにも見える。所詮は田舎の政治と思わず、これが日本の現状とみてみると案外発見できることがあるかもしれない。