群馬県の温泉、無形文化財登録のネックは草津なのか?
無形文化財登録の機運高まる。
少し前の上毛新聞に載った記事であるが、面白いので紹介したい。この程、群馬県の温泉文化を無形文化遺産に登録しようという機運が高まっているという話が上毛新聞である。
温泉文化をユネスコの文化遺産登録をすることで群馬県の魅力を高めてもっと多くの人の訪れを期待することから始まったと思われる。
群馬県には伊香保、草津、万座、みなかみなど有名な温泉地はあるが、全体としてはまだまだ魅力にかけており、もっとポテンシャルを活かてるのではないかという論を展開している。
確かに、都心からは近くともアクセス不便さや魅力的なブランド化ができていないという点において登録する価値はあろうかとは思う。
登録を目指す目的は。
このコロナの状況下で海外からの渡航客は激減しているが、将来的には文化遺産登録をして集客につなげたいという思いがある。冷え込んだ経済を立て直すにも目玉となるコンテンツが必要になるという判断だろう。しかし、登録への要件は厳しく、そもそも温泉文化というもの定義や位置づけも決まってはいない。
ハードルは高いが登録がなされれば、大きな話題を呼び群馬のステータスも上がることだろう。
では温泉文化以外の指定された文化遺産とはどのようなものなのか。
全国の無形文化財に指定されているものが、どういったものかを見ていくと。
- 能楽 浄瑠璃 雅楽 歌舞伎 などの伝統芸能。
- なまはげ、奥能登のあえのこと、はやちね神楽、秋保の田植え踊り、ちゃっきらこ、大日堂舞楽、題目立、アイヌ古式舞踊 などの祭祀、祭りで行われるもの。
- 小千谷ちぢみ、越後上布、結城紬、和紙、和食、などの伝統生産技術、食文化に関すること。
これが主な無形文化遺産であるが、
これらを見ると、温泉文化というのが具体的に何を指すのか、どういう行為や産物が登録をする上で欠かせないのかを提示することが重要になるだろう。
草津温泉の文化とは何か
翻って、草津の温泉文化とは何だろうか。
湯畑から採取される湯の花なのか。 記事に出てくる湯もみだろうか。
それとも伝統入浴法の時間湯だろうか。
頼朝の来草伝説なのか。吉宗お汲み上げの碑なのか。
温泉感謝祭なのか?
それとも各地区にある共同浴場が伝統文化なのか。
登録となると、いまひとつはっきりしない物を具体的になにが温泉文化なのかを提示しなければならないだろう。
草津の問題点。
一つ言えることは、今の町政では無形文化遺産としての群馬の温泉の登録は草津が足を引っ張る可能性が高いとうことだ。
意外に思うかも知れないが、草津では温泉に関しての歴史・文化の資料の保存と検証という面に関してはまだまだ研究がなされていない。
草津には長年、湯治文化として時間湯が続いてきたが、歴代の湯長制度を廃止して、事実上時間湯という伝統入湯法を廃止してしまった。(町では時間湯を運営しているが機能としての時間湯はなくなっているという意味)
八代将軍お汲み上げの碑についても本来お汲み上げの場所ではなく、現在は移動されて全く関係のないところに立っている。
また、湯治の歴史に関してのハンセン病との関わりも草津の黒い部分として触れられたくないと考えているフシがある。草津とハンセン病の資料はあるが草津町としての総括はないように思う。
そして、熱の湯にて単なるシ、ョーとしてやっている湯もみがさも伝統文化であるという宣伝で認知されていることであろう。
元来、湯治の中で入湯者が培い、技術の伝承は湯長が行ってきたもので、これも機能が失われ、湯もみの文化を継承できていない。
湯もみを引き継ぐ人がいないまま、ショーだけやっていたのでは形だけ残すことになり、文化の継承はありえないだろう。形と中身が伴っていない湯もみには、今や半分の価値は半分しかない。
こういったことを文化として認めてもらうにはひとつひとつに説明が求められ、温泉文化として成立しているのかが焦点となるだろう。
まとめ
以上のことを踏まえると草津が文化遺産の登録で足を引っ張る可能性が高い、なよりも歴史の検証、そして未来へ託すという点において、十分な施策が施されているかは疑問である。
まず、草津の歴史を検証し、文化として何を残すべきかを決めて伝統に根ざした保存を継続的にしていくのがまず第一部分条件である。
そしてその担い手を保護することも重要である。それがなって始めて具体的な温泉文化が生まれると思う。
日本にとって温泉は貴重な資源であり、心身ともに大いに役立つ財産である。だから文化遺産として登録することはとてもよいことだろう。
しかし、超えなければいけないハードルは、草津においてはかなり高く、行政が考え方を改めない限り実現不可能なものになる。